反省以外に必要なこととは
今回傍聴した裁判は、60代男性Aさんの窃盗の累犯事件である。
その被害金額は2000円にも満たない。 しかし、前回つかまった時と同じ場所での再犯であったこともあり、被害のあったお店からも「きびしく処罰してほしい」という言葉が寄せられていた。
人は怒ると、残酷な言葉が出てくる。
検察側からもきびしく追及がなされる。
「前回つかまって服役した時、いったい何を学んだんですか?その時は反省しなかったんですか?」
「『二度としない』というような答弁は、前回つかまった時にもしたんじゃないですか?その時と今回とで、何が違いますか?」
「何度も何度も犯行を繰り返してしまう根本的な理由はどこにあると思いますか?」
Aさんは、悩みながら答えていた。自問しているようにも見えた。
「自分の精神的弱さが原因だと思う。次こそ、マザーハウスの力を借りてやり直したい」
そのように答えていた。
情状証人に立った五十嵐さんは、
「再犯を繰り返してしまう人は、孤独で自己肯定感が低く、自分を大切にできない傾向がある。だからこそ、自分を見てくれる人がいる、そう感じる中で自分を大切な存在にしていくことが回復に必要である。マザーハウスでは、Aさんと支え合うことができる仲間がいるので、必ずAさんは回復できる」
そう証言した。
検察側は常に反省を求める。反省が足りていないから再犯するのだと考えている。しかし、Aさんに必要だったことは、他にもあったのではないか。
立ち直りを支える仲間や、自分を見てくれる人の存在である。
人間は弱いものであることをAさんは知っている。だからこそ人との関係性のなかで支え合わなければならない。
更生するには共に歩み、共に生きる仲間が必要だと思う。
「反省」だけでなく、その人の更生に本当に必要なことに気づけるような裁判であってほしい。
(ペンネーム:dada)
※裁判傍聴記について
裁判傍聴記では、マザーハウスに関わる文系大学生のボランティアが、主に代表の五十嵐への情状証人の依頼があった裁判について、傍聴した感想を投稿しています。
※情状証人とは…
刑事裁判で被告人の量刑を定めるにあたって酌むべき事情を述べるために公判廷に出廷する証人を言います。 刑事裁判では弁護側と検察側のどちら側にも情状証人が付くことがあります。(刑事事件弁護士ナビより)