10/3(土)・10/4(日)に開催を予定している日本犯罪社会学会第47回大会において、NPO法人マザーハウス代表の五十嵐弘志と、理事の風間勇助が発表します。

2020hansha

全体の大会プログラムは学会Webサイトをご参照ください。→こちら

報告日程

  • 3日(土) 10:30-12:30 自由報告C

C2 矯正施設で生活する受刑者への健康維持増進ケアモデルの有効性
〇中谷 こずえ(岐阜保健大学)
五十嵐 弘志(NPO 法人マザーハウス)
目的は、受刑者が自身の健康に目を向ける健康維持増進ケアモデルの有効性の検証である。研究参加者は、N 刑務所受刑者男性 19 名、女性 38 名で、ケアモデルを週 1 回、1時間の合計4回展開した。項目は、呼吸法、笑み筋体操、口腔ケア、腰痛体操、手洗い演習などである。ケア前と1ヶ月後を比較し、「歯間への食べ物が詰まりやすさ」「硬い物の噛みにくさ」「朝起きたときの口の中のねばつき」がケアにより改善していた。

  • 3日(土)14:00-17:00 テーマセッションC(ラウンドテーブル)

対立から対話へ ――当事者と行政との協働による地方再犯防止推進計画づくり――
コーディネーター:五十嵐 弘志 (NPO 法人マザーハウス)
司会:風間 勇助 (NPO 法人マザーハウス)
話題提供者:五十嵐 弘志 (NPO 法人マザーハウス)
縄稚 直 (NPO 法人マザーハウス)
石塚 伸一 (龍谷大学)
長田 美樹 (千代田区役所)
江原 顕 (横浜市役所)
鈴木 信浩 (墨田区役所)

 NPO 法人マザーハウスは、受刑者・出所者の社会復帰支援を当事者の視点で行っています。 そのサポートは、逮捕時の裁判における情状証人から、受刑中の文通や面会といったサポート、 出所後の住居手配や生活保護申請、居場所づくりなど多岐にわたります。
こうした支援の現場で の経験をふまえ、元受刑者という当事者だからこそ、社会復帰時に本当に困ること、本当に必要 な支援ということがみえています。 他方、行政では、国の定める再犯防止推進法にもとづき、地方再犯防止推進計画を定める動き が出てきています。当法人代表の五十嵐は、某自治体の計画策定の検討委員となり、当事者の声 をとりいれた地方再犯防止推進計画づくりに関わりました。
 これをふまえ、当法人のような現場で社会復帰支援に携わる NPO と行政との協働のあり方、 すなわち「当事者参加型の刑事政策」を探るテーマセッションを行います。現状の、国からのト ップダウン方式で定められつつある地方再犯防止推進計画に対して、協働型の計画策定では、検 討の段階からさまざまな協力機関が加わることにより、より実効性の高い計画策定の可能性が 示唆されます。しかし、見えてくる課題としては、そもそも当法人のような当事者主体の NPO が自治体の計画策定に充分に参画できないでいること、再犯防止の取り組みには一つの行政組 織内においても部局をまたぐ連携が必要となること、都道府県と市区町村というレイヤーの異 なる自治体同士の協力体制の構築、さらに司法と福祉をつなぐ専門家・専門機関の連携など、再 犯防止に関わる多機関の協力の輪をつくること等が考えられます。
 また、策定された計画が実際 に遂行されているかどうかを検証する「評価」の問題も今後生じるものと考えられます。
 以上の課題について、本セッションでは、NPO 法人マザーハウス代表の五十嵐弘志及び同法 人の当事者スタッフ、犯罪学・刑事政策の研究者、行政職員を話題提供者として、その協働の可 能性と課題を探ります。

  • 4日(日) 14:00-17:30 シンポジウム

再犯防止について真剣に考える

コーディネーター・司会:本庄 武 (一橋大学)
指定討論者:五十嵐 弘志(NPO 法人マザーハウス)

再犯防止推進法が制定され、各自治体で再犯防止推進計画が策定されるなど、再犯防止に関する動向が活発であるが、具体的に何が目指されるべきなのかについては、依然として明確とは言い難い。そこで本シンポジウムでは、これまで関連領域において理論研究や実践に携わってこられた方々をパネリストに迎え、多角的に再犯防止について検討する。

1.刑事政策理念と再犯防止
赤池 一将(龍谷大学)
本報告においては、まず、近時、注目を集める刑事政策の指導理念である「再犯防止」につい
て、責任・危険性の緊張関係を軸に、また、フーコーの分析を踏まえて、種々の領域と文脈において構成されてきた改善更生等の既存の指導理念との差異と特徴を検討する。その上で、「再犯防止」の理念により刑事政策にどのような変化がもたらされうるか、施設収容前後での近年の政策展開を素材にその意義と問題を検討する。

2.犯罪者処遇と再犯防止――エビデンスに基づく社会内処遇――
勝田 聡(札幌保護観察所)
リスク・ニード・リスポンシビティモデルは、一定のエビデンスがある犯罪者処遇のモデルで
ある。社会内処遇においては、このモデルを基盤とし、ケースフォーミュレーション、リラプスプリベンション、行動変化のモデル、グッドライフモデル、デジスタンスモデルなどの理論的・
実証的根拠に基づく見立て、プランニング及び処遇を実践することが重要である。法務省保護局が開発したアセスメントツールを軸として、これらを論じる。

3.デシスタンスと再犯防止
守谷 哲毅(関東地方更生保護委員会)
日本における犯罪者処遇に関する施策において、再犯防止の重要性が唱えられるようになっ
て久しい。他方、個々の主体的存在の変化に着目した概念である“デシスタンス”(犯罪からの離脱、立ち直り)は、再犯防止にはそぐわないのではないかとする批判もあり得る。本報告においては、再犯防止においてデシスタンスがどのように位置付けられ得るのか、また、デシスタンスを促進する再犯防止施策があり得るのかについて、過去の研究における知見等も踏まえ考察
する。

4.社会政策としての「再犯防止の推進」のあり方
高橋 有紀(福島大学)
「最良の刑事政策とは最良の社会政策である。」とのリストの言葉とは裏腹に、日本では、刑
事政策は国の刑事司法制度に担われるべきものと認識されてきた。再犯防止推進計画に対する
地方公共団体の戸惑いの背景には、こうした事情が影響していると考えられる。本報告ではそうした問題意識の下、犯罪をした者等の「再犯防止の推進」を地域における社会政策として位置づける方策について、地域福祉の視点も踏まえて考察する。